2020.2.2 定例会(表)

令和2年初めての例会は先生による昨年の会計報告から始まり先生、先生、先生の順に症例発表・講演が行われました。


先ず、
先生による肺高血圧症を疑って治療した症例では、いずれも心エコー検査を活用して三尖弁逆流速度から簡易ベルヌーイ式を用いて肺高血圧症と臨床診断されていました。またシルデナフィルを投薬することで咳の改善や失神がなくなる等、その有効性に関しても大変興味深い報告をして下さいました。先生の発表後に、僧帽弁閉鎖不全症でACEIをどのタイミングで使うのか、僧帽弁閉鎖不全症から肺水腫になる前に肺高血圧症になるメカニズムについて討論しました。


次に
先生によるMガードの症例報告では、認知機能障害症候群を疑う高齢犬で、部屋の隅にいくとしばらく動けなくなってしまっていた子が、Mガードを投与してから自分の意思で隅にいかなくなり、障害物をよけることが出来るようになったという報告でした。実際の動画を拝見しましたが、非常に有効な手段だと感じました。


最後に先生による講演は「家畜化という進化」「イヌの記憶について」の二本立てでした。
旧ソ連の遺伝学者ドミートリ・ベリャーエフがギンギツネの家畜化の実験で、何世代にもわたり従順なキツネを交配させて、最終的にイヌのような従順さをもったキツネを作り出すことに成功したこと、そのキツネたちには長毛や垂れ耳などの身体的特徴があり、また本来年1回のはずの発情が2回になったなど生理的な変化も起きたこと、後にゲノム解析の結果、従順性に関わる遺伝子のひとつが同定されており、従順性は遺伝するということをお話し頂きました。イヌの祖先であるオオカミも何らかの形で人の生活に入り込み、従順なオオカミ同士の交配により、その従順性が遺伝し、結果として現在のイヌが生まれたのではないかということでした。


イヌの記憶についての内容では何故オスワリはすぐに出来るようになるのに、トイレトレーニングはうまくいかないのかという事を記憶の分類、イヌの本能で説明されているところが印象的でした。オスワリは声をかけて顔をあげさせることで自然と腰を下ろすといった一連の流れを無理強いしないで出来ること、また出来た報酬におやつをあげることで情動記憶となるので覚えやすい。一方、トイレトレーニングは人の住環境に影響されてしまい、本来ベッドから遠いところで排泄をしたいのに、ベッドのすぐ傍にトイレがある等、本能に逆らった行動をとらなければいけないケースが多く、このような意味記憶の学習は習得するのに時間がかかるということでした。今後の診療に即役立つ内容で、非常に面白い内容でした。
生の発表後に、雷恐怖症は実は情動記憶ではなく、野生動物としての本能が遺伝子に刻まれているのではないかという討論をして全ての発表が終了しました。


どの先生方も非常に興味深い内容の発表をして頂きありがとうございました。日々の診療に役立てていきたいと思います。(
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