2020.7.26 定例会(裏)

新型コロナウィルスの感染拡大があり、今までのように会議室で集まっての定例会が難しいため、オンラインアプリZOOMを使っての発表会が開催され、14名の先生方が参加しました。


工藤先生から「慢性気管支炎疑いのダックスフント」と「非定型副腎皮質機能低下症疑いのトイプードル」の2症例の発表がありました。
ZOOMを使用した勉強会は初めてでしたが、Power Pointでの発表は不具合もなく順調に進みました。1症例ごとに発表後に討論会があり、治療法や検査・診断法について有意義な討論が行われました。


「慢性気管支炎」の症例は2年前から咳の症状があり、セレニア、抗生剤、アンチノールへの反応が悪く、ステロイドで咳が治まるという症例でした。ステロイドを漸減していくと症状が再発し完全には休薬できずに、投与量、投与間隔、ステロイドの種類を変更しながら苦労して管理されていました。
慢性気管支炎の診断基準としては、2か月以上続く咳、過剰な喀痰貯留、心臓と肺における慢性疾患の除外と示されていました。除外診断なので、確定診断をつけるのが難しい病態だという印象を受けました。日本ではダックスフントに多いようです。
治療に関しては、プレドニン、気管支拡張薬、鎮咳剤が挙げられますが、完治は困難のようです。また、発表後の討論ではゲンタマイシンとデキサメサゾンを混入したネブライザー治療の効果が期待できる事や、新しい鎮咳薬ダンプロンが著効した症例がいたとの報告がありました。


「非定型副腎皮質機能低下症」の症例は食欲不振、元気消失、震え、嘔吐、腹鳴、血便が時折認められるトイプードルでした。症状が認められた時にはデキサメサゾンの注射に明らかに反応が認められていた。1回目のACTH刺激試験の結果はpreもpostも基準値内。電解質異常もなし。エコーでは副腎の萎縮があった。
7か月後の2回目のACTH刺激試験ではpreのみが若干の低値を示した。
現在は症状が出たときにデカドロンを半錠投与することで状態が安定している。
おそらく、ストレスが多くかかった時に内因性のステロイドが足りなくなり症状が出てしまうのではないかという考察でした。飼主のストレスが飼い犬にも伝染するという報告もあるので、飼主に飼い方の指導もしているそうです。


その後の討論では、副腎皮質機能低下症の症例を抱えている先生方の検査法や検査結果がどの様なものかの話があり、ACTH刺激試験をしなくても、preコルチゾールが1㎍/dl以下ならば強く疑えるのではないかという事も言われていました。そもそもACTH刺激試験自体が安全な検査なのかどうかも話題になり、副腎を壊すという説もあるそうで慎重に行うべき検査なのかという印象に変わりました。エコーでの副腎の大きさの評価が有用なのかは、どちらの意見もありました。
他には消化器症状が出ることが多い、トイプードルが多い、電解質異常がないこともある、原因不明の低アルブミン血症がアジソンの兆候だったこともあるそうです。
討論中に「内分泌疾患は生活に困らない程度にすれば良い」という言葉があり、数値よりも症状がどうなのかという事が一番大事なのだと改めて思いました。


今回の2つの疾患は、私自身は今まで診断した経験がなく、見逃していた可能性もあります。今後診療していくうえで、考えなければいけない疾患として心に留めて、日々の診療に役立てていければと思います。(大木)